2011年、iOS5から搭載された「iCloud」は、それまでのハードディスクや物理メディアありきのファイル管理の常識を変えた、当時としては画期的なシステムでした。
iPhoneはもちろん、iPadやMac、AppleWatchなど、インターネットを通じて全てのApple製品がシームレスに繋がる「iCloud」は、今や神システムとしてAppleの中核をなす存在です。
しかし、iPhoneユーザーで「iCloud」の恩恵を受けていないユーザーは恐らくいないものの、一体「iCloud」とはどのようなシステムで、何時どのような場面で使われているのかを把握しているユーザーは、意外と少ないのが現状です。
普段あまりに自然に使っているが故に、意外と知らない、今更聞けない、そんな「iCloud」を解説していきます。
そもそも「クラウド」とは一体なんなのか?
「iCloud」とは「クラウド」を用いたサービスのことで、他にはGoogleの各種サービスやAmazonのプライム系サービスなども「クラウド」を用いたサービスとして有名です。
クラウド(Cloud)とは、単純に和訳すると「雲」という意味で、具体的には「インターネットのことを雲と見立てて」クラウドと呼んでいます。
クラウドが普及する前の世界は、パソコンのデータはパソコンのハードディスクやフロッピーディスク、CD-RやDVD-Rなどの物理メディアに保存しておく必要がありました。
この場合、保存したデータを開く際は、パソコンのハードディスクは、そのハードディスクが入っているパソコン本体、物理メディアは、それらを読み取る装置が必要で、万が一それらの装置が故障した際は、中に保存しているデータが消えてしまう、または破損してしまうというリスクが常に付きまとっていました。
しかし、例えばiPhoneユーザーがメモ帳アプリに保存した文章は、iPhone本体や物理メディアではなく、インターネット上のAppleのデータ保管庫に保存されるため、その保管庫にアクセスすることさえ出来れば(つまりインターネットに繋がりさえすれば)iPadでもMacでも、メモ帳アプリを開けば同じ文章を参照・編集することができます。
つまり、iPhoneのメモ帳アプリのデータは、インターネット上に保存されており、iPhone以外の機器でも、そこにアクセスさえできれば、どの機器でも同じデータを参照・編集できるわけです。
これは、例えるなら、メモ帳アプリのデータがインターネットという雲に保存されてるイメージで、ぷかぷかと浮かんでいる雲に、スマホやパソコンでアクセスする感覚なので、これが「クラウド」と呼ばれている由来です。
そして、そのインターネットという巨大な雲の中の、どこにそのユーザーのメモ帳アプリのデータがあるのかを表す、住所のようなものが「Apple ID」という訳です。
Gmailは、インターネット上にぷかぷかとメールのデータが浮かんでいますが、これは「googleアカウント」という住所を打ち込めば、どの機器でもメールの内容を参照することが出来ますし、Amazonプライムビデオは、Amazonプライム会員のIDという住所を打ち込むと、どの機器でもインターネット上に浮かんでいるAmazonビデオの動画が楽しめるわけです。
つまり、クラウドとは「機器に依存しないインターネットを活用したファイル・データ管理システム」のことです。
「iCloud」とはAppleのクラウドサービスのこと
クラウドの概要が分かったところで、改めて「iCloud」を説明すると「iCloudとはAppleのクラウドサービス」のことです。
つまり、インターネット上のAppleの領域に、iPhoneをはじめとするApple製品のファイルやデータを保存できるシステムが「iCloud」で、誰のどのファイルがどこに保存してあるかを把握できるものが「Apple ID」なのです。
Aというユーザーのデータは「iCloudのAのApple IDの領域」に保存され、Bというユーザーのファイルは「iCloudのBのApple IDの領域」に保存されるので、AもBも「自分のApple ID」さえ分かっていれば、iPhoneからでもiPadからでも、Macからでも「iCloud」の同じファイルの場所にアクセスできるわけです。
「iCloud」はiPhoneでもiPadでもMacでも「Windowsでも」使える
「iCloud」はAppleのクラウドサービスなので、iPhoneやiPad、Macで使えることは当然ですが、実は、WindowsでもiCloudを使うことができます。
これは、仮にスマホがiPhoneでも、パソコンはWindowsというユーザーは沢山いるので、当然と言えば当然の話ですが、本来のクラウドの意味を考えれば、その意味でも当然と言えます。
なぜならクラウドとは「機器に依存しないインターネットを活用したファイル・データ管理システムのこと」であり、つまりAppleとMicrosoftの機器の違いさえ依存しないシステムなのです。
Windowsから「iCloud」にアクセスする場合は「iCloud.com」というサイトにApple IDを用いてログインすると「iCloud」に対応しているサービス(例えばメモ帳など)のデータを参照することができます。
「iCloud」を使えば「保存」という概念が不要になる
ハードディスクや物理メディアにデータを保存していた時代は、例えばパソコンで文章を作成した際は、必ず「保存」するのが鉄則でした。
なぜなら、データを保存しないままパソコンを閉じると、せっかく作ったデータが消えてしまうからです。
しかし、例えば「iCloud」に対応している「Pages」というAppleの文章作成アプリは、インターネットに接続している限り、常にリアルタイムで「iCloud上にPagesで作った文章を保存している」ので、文字入力終了後に「保存」をする必要がありません。
仮に、Macで文章を書いている際に、不慮の事故でMac自体が故障したとしても、直前まで作っていた文章は「iCloud」に保存されているので、iPhoneでそのデータを参照すれば、その続きをiPhoneで書くことも出来ます(PagesはMac、iPhone共通アプリです)
つまり「iCloud」対応のアプリを使用している際は、インターネットに繋がっている限り、データはiCloud上に自動保存されるで、ユーザー自身でのデータの保存は不要ということです。
「iCloud」の各種サービスについて
最後に「iCloud」を用いたAppleの代表的なサービスをいくつか紹介していきます。
フォトストリーム
iPhoneで撮影した写真は、原則iPhone内のメモリ領域に保存されますが、実はiPhoneをWiFiに接続した際に「フォトストリーム」と呼ばれる、iCloud上の写真領域にも保存されます。
この機能を活用すると、iPhoneで撮った写真をMacに転送しなくても、Macの写真アプリのフォトストリームの項目を見ることで、iPhoneで撮った写真を閲覧したり編集することができます。
しかも「フォトストリーム」の写真データは、インターネット上にあるわけなので、Macのメモリ領域を消費することがありません。
iTunesデータの複数端末での共有
iTunes上で「Aという曲を買った」というデータは「iCloud」に保存されるので、iPhoneで買ったAという曲をiPadで再生することも、Macで再生することも可能です。
「iCloud」に保存されている曲データを、インターネット上でストリーミング再生することも可能ですし、それぞれの端末にダウンロードすることも可能です。
Pages・Numbers・Keynoteのデータ共有
いわゆる「ワード・エクセル・パワーポイント」のAppleバージョンが「Pages・Numbers・Keynote」ですが、これはiPhone・iPad・Macで共通のアプリになっており、Macで作成した文章をiPhoneで開いて編集したり、iPadで作った表計算データをMacで修正したりすることが出来ます。
これらのデータは常に「iCloud」にリアルタイムで保存されているので、どの端末でデータを開いても常に最新の状態が保たれています。
「iCloud」を分かりやすく解説します まとめ
「iCloud」のシステムを理解できると、今まで以上にApple製品を便利に使うことができます。
端末や保存という概念から解放され、データの消滅に怯えることもなくなります。
「iCloud」は無料で使える(一部有料)素晴らしいサービスなので、ぜひ積極的に活用していきましょう。